山内康彦氏の講演会(令和6年1月23日)を終えて

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(一般社団法人)障がい児成長支援協会理事長であり、中部学院大学非常勤講師の山内康彦氏(学校心理士SV・ガイダンスカウンセラー)による講演会を行いました。

山内康彦氏プロフィール

1968年岐阜県生まれ。岐阜大学教育学部卒業。岐阜大学大学院教育学研究科修了。岐阜大学大学院地域科学研究科修了。岐阜県の教員を20年務めた後、教育委員会で教育課長補佐となり、就学指導委員会や放課後子ども教室等を担当。その後、学校心理士とガイダンスカウンセラーの資格を取得。現在は一般社団法人障がい児成長支援協会の代表理事を務めながら、学会発表や全国での講演活動を積極的に行なっている。中部学院大学非常勤講師。株式会社グロー・トラス取締役。明蓬館SNEC高等学校愛知・江南(グロー高等学院)学院長。元日本教育保健学会理事。

冒頭では、山内先生の小学2年生の時の通知表を見ながらの幼少期から現在に至るまでの自己紹介でした。

先生自身がADHD、自閉症であったことをお話されています。通知表にはすべて"もう少し"担任の先生のコメントには『授業中によそ見、てなぶりが多く忘れ物をしても注意されるまで知らん顔で何もしないで遊んでいます。強く叱られれば何でもさっさとやれる力を持っていますので自分からやろうという気を持ってくれるのを待っています』と書かれていました。当時の先生は、椅子に縛られたり叩かれたりしていたそうです。

ではなぜ山内先生は、障がい児成長支援協会理事長、中部大学非常勤講師という肩書を手にするまでになったのか、「この通知表を見たら立派になったでしょ?(笑)」と話されていました。

先生は現在の自分があるのは、小学校3年生から叱って押さえつける教育ではなく一緒に遊んでくれる寄り添った教育になったからだとおっしゃっていました。3年生からの担任は当時の山内先生を肩車をして鬼ごっこに参加したり、みんなの前で山内先生のことを褒めてくれたそうです。何をしても叱られてきた当時の先生は、褒めてくれて一緒に遊んでくれる担任の先生の言うことは聞くようになったそうです。

山内先生は大学を卒業して学校教員、教育委員会に務められています。教育委員会では就学指導委員会という通常の学校か特別支援学校かなどを判定する担当もしていたそうです。その経験から『具体的にどのような進路や就労があるのか?』についてお話いただきました。

発達障害児の具体的な進路

1. そもそも通常級と何が違うのか?

支援学校

生活単元中心で学習するよりも「自立して生きていく力」を身につけていくことが最優先!小学一年生ではほとんど学習は行わず身辺自立を優先。

生活単元学習とは?

生活単元学習は一連の活動を組織的に経験することによって、自立的な生活に必要な事柄を実際的・総合的に学習することです。

支援学級(知的学級)

生活単元+教科の授業で基本的には支援学校と同じ。しかしその子に合った学習も進めていく。通常級の交流もその子に合わせて行う。

支援学級(自閉・情緒学級)

教科の授業+自立活動で基本的に学年の教科学習を行い、SSTなどの自立活動を行う→その子によるが通常級との交流も多く、通常級に戻るケースも多い。

通常の学級は、教科の授業が中心で原則担任1人で30人の子ども達を担任する。合理的配慮を行わなくてはならないが、現実は想像の通り難しい。

2. それぞれの教室を判断する基準は?

判定は、市町村の教育委員会。

※学校・発達支援センター・専門医+保護者の願書などが基になり、教育委員会は判断する。

①身辺自立しているか

②知的な遅れがあるか

③情緒面の問題がないか

3. 支援体制は何が違うのか?

・支援学校→担任が2人

・支援学級→担任が1人+支援員

・通常学級→担任が1人+支援員

4. 進路・就労は何が違うのか?

支援学校の場合

高等部まで支援学校で通常の学校(支援学級)への変更は事例としてほとんどない。

→障がい者手帳を使って、障がい者枠でより良い就職先を目指す。

支援学級(知的)の場合

最終的に支援学校高等部から就職する人が多い。

→知的な遅れがあるため、高等学校の学習についていけず、卒業することができないと判断される。

支援学級(自閉・情緒)の場合

多くの子が障がい者手帳がない

→手帳がないと支援学校に入学できない。高等学校進学を目指さなくてはならない。

当事業所「奏」が感じたこと

私が今回の講演会に参加して改めて感じたことは、できるだけ早い時期からこの子の将来の道を決めておかないといけないということでした。

漠然とこの子は通常級では大変そうだから、支援級の方がいいのでは?と感じていたことも支援級になるということは学習が通常級で行うものと異なってくるということ。将来高等学校に進学を考えているとしたら受験(内申点の含めて)を考えていかなければいけないということ。通信高校や定時制高校の進学も難しいのであれば支援学校高等部に進学するのか。では支援学校高等部に入学するとその先はどうなるか。まず支援学校高等部を卒業しても高卒にはならないということ。就労先はA型就労、B型就労、一般就労(障がい者枠)が考えられます。ただこういった就労先に就職するには障がい者手帳が必要ということ。

現在は一般就労の就職先が少しでも増えるよう、障がい者雇用促進法によって企業に障がい者の雇用を義務化していますし、雇用安定のため『特例子会社』の促進もされています。

たくさんの道ができている一方で、選択を間違えると行き止まりになってしまうこともあるのが現状だと気づかされました。

目の前の事に精一杯でこの子の10年後、20年後まで想像するのは大変かもしれません。保育園で加配を付けて預かってもらった。小学校になると通常級?通級?支援級?自閉・情緒学級?それとも支援学校?『将来進学して一般の会社に就職して欲しいから、少し大変かもしれないけど通常級に!』この子のためにと、困った顔をしていても心を鬼にして背中を押してみるともしかしたら上手くいくかもしれませんが、二次障がいを起こしたり不登校になってしまうこともあるかもしれません。進学の際、学校との話し合いはもちろんですが今までお世話になった、保育園や福祉サービスの方々に相談することも大切なのだと思います。

まずこの子に何を身につけることが重要なのかを知るためにS-M社会生活能力検査を行うこともいいかもしれません。資格を持った人しか検査ができないため、心理士の先生のいる病院や発達サポートセンターなどに訪ねてみるといいのかもしれません。

社会生活能力検査はご存知でしょうか?

S-M社会生活能力検査は、乳幼児〜中学生の子どもの普段通りの社会生活能力(自立と社会参加に必要な生活への適応能力)を測定する検査です。

子どもの日常生活をよく知っている大人(保護者や担任教師など)が回答します。

15分程度で簡便に、知的障害や発達障害などの特徴を持つ子どもたちへの支援の手がかりを得ることができます。

当事業所「奏」でも山内先生のコメント付きのS-M生活能力検査を実施していますので、お気軽にお問い合わせください。